体育研究所 コラム

体育研究所 2019年度 遺伝子編集技術を用いたヒト遺伝子多型基礎研究の試み(鴻崎)

はじめに

本プロジェクトでは、遺伝子編集技術法を用いて、ヒト遺伝子多型の一つとして知られるαアクチニン3タンパク質の遺伝子、「ACTN3」という遺伝子を欠失したラットの作出を試みています。今回のコラムでは、本プロジェクトの要となる遺伝子編集についてご紹介します。

遺伝子編集とは?

生物には二重らせん構造のDNAが存在します。DNAはアデニン:A、チミン:T、シトシン:C、グアニン:G(AはTと、CはGと対をなす)といった異なる塩基がそれぞれ配列を作ってタンパク質の設計図である遺伝子を形作ります (図1)。タンパク質は細胞、臓器、器官の生理的な機能そのものあるいはそれを形作る要素となるため、遺伝子は生物の設計図と称されるほど重要な役割を担います。遺伝子編集とは、遺伝子を任意の位置で切断して遺伝子の改編を行うことであり、文字通り生物の設計図を“編集”する技術です。
中でもCRISPR/Cas9と呼ばわる方法は、数ある他の遺伝子編集技術と比較して簡便で、なおかつ高効率での遺伝子編集を可能とすることから、現在主流の遺伝子編集技術として様々な研究分野で用いられています(図2)。

(図1) DNAの二重らせん構造
(図2) CRISPR/Cas9による遺伝子編集のしくみの概略図

またこれらの遺伝子編集によって、元々持ち合わせていた遺伝子が変異した動物を遺伝子改変動物と言います。
本プロジェクトでは、このCRISPR/Cas9法を適用してACTN3を欠失した遺伝子改変動物を作出し、ACTN3の欠失によって身体の各器官がどのような影響を受けるかを検証していきます。