子どものからだ研究所 研究所概要

所長挨拶

「身体に纏わる文化と科学の総合大学」を標榜する本学では、体育・身体活動・スポーツを通じた健康で豊かな社会・人づくりの実現に向けた教育・研究活動に取り組んでいます。中でも、子どものからだに焦点をあてた研究活動は古くから一貫して取り組まれてきたテーマであり、その研究成果を着実に蓄積してきました。また、その成果を日々の教育活動に活かすだけでなく、広く社会に発信する活動にも努めてきました。正に,本学に課せられた社会的要請に応えるべく推進してきた研究活動といえます。

しかしながら、世間を見渡すと、自殺、いじめ、不登校・保健室登校、暴力、虐待、体罰、学級崩壊、貧困・格差等々、子どもをめぐる問題が山積しています。また、健康問題に目を向けても、からだのおかしさ、運動能力低下、身体活動不足、アレルギー、睡眠問題、視力低下、インターネット依存、うつ傾向等々、解決しなければならない課題がたくさんです。加えて、国連子どもの権利委員会から示された「日本政府第4・5回統合報告書に関する最終所見」(CRC/C/JPN/CO/4-5)では、「社会の競争的な性格により子ども時代と発達が害されることなく、子どもがその子ども時代を享受することを確保するための措置を取ること」(パラグラフ20-a)や「(前略)本委員会は、十分かつ持続的な資源を伴った遊びと余暇に関する政策を策定、実施すること、および、余暇と自由な遊びに十分な時間を割り振ることを含め、休息と余暇に関する子どもの権利、および、子どもの年齢にふさわしい遊びとリクリエーション活動を行う子どもの権利を確保するための努力を強化すること」(パラグラフ41)が勧告されている現実もあります。これらの事実は、子どものからだに関する研究のさらなる進展の必要性を物語っています。

そもそも、子どもは未来そのものです。また、子どもを想わないおとなはいません。少なくともそう想いたいものです。そのため、子どもの声に耳を傾けることは未来を展望することにも通じます。ところが、前述の最終所見には「(前略)本委員会は、子どもに影響を与えるすべての事柄において自由に意見を表明する子どもの権利が尊重されていないことを、依然として深く懸念している」(パラグラフ21)との勧告も示されています。その点,子どもたちは自らのからだを犠牲にして、SOSともいえるような種々の「声」を発してくれています。だとすれば、そのような「声」に注目し、声にならない「声」、言葉にしにくい「声」にも想いを馳せつつ、子どもの「声」を聴く必要があります。

また、「子どもは社会を映す鏡」ともいわれます。確かに、おとな社会においても、自殺、いじめ、引きこもり、貧困・格差等々が問題視されています。そのため、本研究所の成果は子どもに限らず社会の多くの方々に還元できるものになると考えています。 このようなことから、「身体に纏わる文化と科学の総合大学」として、子どものからだに関する研究を一層推進し、その成果を広く社会に還元することを目的に、本年(2023年)4月に設立されたのが本研究所というわけです。そして、当面は「子どものからだの実態に関する研究(実態研究グループ)」、「子どものからだを育む実践に関する研究(実践研究グループ)」、「子どもに関わるおとな支援に関する研究(支援研究グループ)」の3つのプロジェクトを掲げて種々の研究を推進していきたいと考えています。兼任所員には、子どもを取り巻く各研究分野の専門家が名前を連ねてくれています。今後の研究成果にご期待くださればと思います。 いずれにしても、産声を上げたばかりの「子どものからだ研究所」ですが、今後は学内外、国内外から子どものからだ研究のメッカといわれる研究所に成長するよう、一歩ずつ着実に子どものための研究を進めていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

子どものからだ研究所
所長 野井真吾

研究所の概要

「身体に纏わる文化と科学の総合大学」を標榜する本学は、体育・身体活動・スポーツを通じた健康で豊かな社会・人づくりの実現に向けた教育・研究活動に取り組んでいます。

中でも、子どものからだに焦点をあてた研究活動は古くから一貫して取り組まれてきたテーマであり、その研究成果も着実に蓄積されてきました。また、その成果を日々の教育活動だけでなく、広く社会に発信する活動にも努めてきました。

このような経緯も踏まえて、2023年4月に「子どものからだ研究所」を設立いたしました。人類の健康、社会の福祉に貢献する子どものからだ研究の発信地として、同分野における国内外の研究を牽引していけるような研究活動に従事しています。