オリンピックスポーツ文化研究所 研究所概要
所長挨拶
日本体育大学は1928年アムステルダム大会から、これまで多くのオリンピック・パラリンピック選手を輩出してきました。1952年のヘルシンキ大会では、二つの銀メダルと一つの銅メダルを獲得し、夏季大会に出場した選手は2024年3月現在で計414名、冬季大会に出場した選手は計49名に上ります。2020東京オリンピック・パラリンピック大会では59名のオリンピアンと10名のパラリンピアンが大会出場を果たし、4つの金メダル、7つの銀メダル、5つの銅メダル、合計16個のメダルを獲得いたしました。
このように多くの選手が大会出場を果たし、メダルを手にしてきた功績を記録に残すことは、この研究所が設立される以前は本学の課題でありました。それがこの研究所の設立により「メダリストの軌跡」を蓄積し発表できる環境が整い、その役割をオリンピックスポーツ文化研究所が果たすことができるようになったことは、歴代の研究所所長の先生方のお力添えがあったからであると心から感謝しております。
さて、オリンピックスポーツ文化研究所の目的は①オリンピックの歴史、理念の研究(文献収集、国際的な研究情報の収集)、②オリンピック理念の教育(トップアスリート、学生、指導者)、③日体大におけるオリンピックの歴史の構築、④ドーピングの倫理、社会学的研究、⑤ドーピング防止教育(アスリート、指導者)、⑥日本スポーツ文化の研究、⑦「オリンピック博物館」あるいは「日体大オリンピック記念館」等の発展についての検討であります。この中でも特にオリンピックの価値教育は幅広くなってきており、こうした研究も、これまで同様に蓄積しながらそれらをまとめて、学生の教育や研究に役立たせていくことができると考えます。
大学は研究と教育の場であり、それらを現場に返していく役割も担っています。今後は学生のみならず、多くの人たちに還元できる場を提供していきたいと思います。そのためにも、所員のみならず多くの方々のご協力とご支援をお願い申し上げます。
オリンピックスポーツ文化研究所
所長 依田 充代
設立趣旨
紀元前の時代に、ギリシア人たちは名誉を求めてオリンピア競技祭に集った。そして19世紀に、スポーツの力を信じる一人の青年によって、オリンピック競技祭は現代によみがえることになった。近代オリンピックを再興したクーベルタンの理念は人類の幸福を願い、未来を担う人間を理想へと導く道を開いた。
オリンピックは人類の知的遺産である。それは人々に夢を与え、競技者を成長させ、人間相互の理解と敬意を生み出すために存在する。しかしながら相互の憎しみが広がり、名誉や倫理よりも実利に価値を求める時代にあって、オリンピックも受難の時代を迎えている。
日本体育大学はこれまでメダル獲得においても選手と役員の活躍の面においても、近代オリンピックの歴史とともに歩んできた。これはまさに日本のスポーツ文化の歴史ともいえよう。そして本学はオリンピックに託された人類の夢を守り、崇高な理念を継承していく学問の府でありたいと願う。よってここに、本学の学術的ならびに社会的責務を果たすため、オリンピックの研究を推進し、その成果を次世代に贈るためのオリンピック・スポーツ文化研究所を設立する。
目的
オリンピックの研究を通じて建学の精神を実現し、広く世界の福祉に貢献する。さらには本邦のスポーツ文化の牽引を行う。 具体的には次のような任務を遂行する。
- オリンピックの歴史、理念の研究(文献収集、国際的な研究情報の収集)
- オリンピック理念の教育(トップアスリート、学生、指導者)
- 日体大におけるオリンピックの歴史の構築(卒業生、関係者の品物、練習日記などの文書の収集と展示)「オリンピック博物館」あるいは「日体大オリンピック記念館」等に発展することを検討する。
- ドーピングの倫理、社会学的研究
- ドーピング防止教育(アスリート、指導者)
- 日本スポーツ文化の研究
概要
オリンピックスポーツ文化研究所は、2015(平成27)年4月に本学の附置機関として設置された。その目的は、本学のミッションに謳われている「我が国のスポーツ文化の深化・発展に務めるとともに、オリンピックムーブメントを主導的に推進し、スポーツの「力」を基軸に、国際平和の実現に寄与する」点にあった。こうした趣旨のもと、初代研究所長には当時の学長・谷釜了正教授(現名誉教授)が就任し、所長以下専任教員15名を研究所員として研究プロジェクトがスタートした。そして、翌2016(平成28)年3月には、機関雑誌『オリンピックスポーツ文化研究』第1号(現在も継続中)を発刊するに至った。以来、研究所は、2代目所長(2018-2022)・関根正美教授、3代目所長(2023-)・依田充代教授をリーダーとする体制へと引き継がれ、国内外関係機関との連携や研究プロジェクトの遂行を通して我が国におけるオリンピックムーブメントの一翼を担っている。
2023-2024年度における研究プロジェクトは4つ(「日体大とオリンピック・パラリンピック」、「オリンピック・パラリンピックの理念・価値と現代的課題」、「オリンピックスポーツ文化研究所所蔵品の整理と目録・解題」、「1964 年東京オリンピック蹴球競技の運営に関する史的研究」)で構成されており、所員21名は各専門領域に応じてその活動に従事している。オリンピックスポーツ文化研究所は、本学の歴史において重要な位置を占めるオリンピックという対象を、人文・社会科学的方法論を駆使しつつ探究し、その成果を、本学はもちろん国内外に向けて広く社会へと還元していく機関でありたい。依田所長体制となった2023年度からは、なかでもプロジェクト1「日体大とオリンピック・パラリンピック」の遂行に注力し、研究所の設立目的の一つでもある本学ミュージアム等への発展を目指している。