オリンピックスポーツ文化研究所 研究所概要

所長挨拶

平素は、日本体育大学オリンピックスポーツ文化研究所の事業にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。本年度も、研究所の事業に対し、お力添えのほど、よろしくお願い申し上げます。

オリンピックスポーツ文化研究所は、「我が国のスポーツ文化の深化・発展に務めるとともに、オリンピック・ムーブメントを主導的に推進し、スポーツの『力』を基軸に、国際平和の実現に寄与する」という本学の使命を果たすべく、2015年度に、当時の松浪健四郎理事長と谷釜了正学長のご尽力によって設立されました。

周知の通り、創立134年の歴史を誇る本学は、メダルの獲得数においても競技者及び大会関係者の派遣数においても、近代オリンピックとともにその歩みを進めて参りました。ゆえに、研究所の主要な事業の一つには、「日体大におけるオリンピックを中心とした歴史の構築」や「スポーツミュージアム」等への発展を検討していくことが掲げられたわけであります。以来、研究所は、初代所長・谷釜了正先生(2015-2017)、2代目所長・関根正美先生(2018-2022)によって牽引され、メインプロジェクト「オリンピアン・パラリンピアンの記録」を通して、戦後の本学オリンピック関係者の歩んだ軌跡を記録に留める活動等に取り組んで参りました。

一方で、創立以来の本学オリンピック関係者に関する史資料の収集は、本学の長年の課題であり、研究所設立以来の使命でもありました。本学の、人文・社会科学研究の旗振り役を担う研究所は、設立10周年を迎えた2024年度のタイミングで今一度その設立目的に立ち戻り、その指針を示すことと致しました。その結果、全国各地に散在しているオリンピックを中心とした本学創立以来の歴史の断片を拾い、紡ぎ、そして、次世代の日体ファミリーへと継承していく事業と、オリンピックをはじめとしたスポーツ文化に関する学術研究とに、まさに、車の両輪の如く従事していく研究機関でありたいと考えるに至りました。

本年は、第二次世界大戦後80年という節目の年にあたります。先の大戦では、オリンピック関係者をはじめとする、実に多くの先輩方(日体生)がその尊い命を落としました。いうまでもなく、その時代を知る先輩方は年々少なくなっております。再び体育・スポーツに汗を流すことが叶わなかった先輩方の無念を想わずして、真に現代社会における平和を考えることには繋がりません。ウクライナをはじめ世界各地で戦争や暴力が止まない今だからこそ、戦没同窓生に関する調査・研究も、研究所が担うべき喫緊のプロジェクトと考え、今年度はその名簿(第一弾)の作成を目指しているところです。

16年後、2041年の創立150周年を見据えて、オリンピックスポーツ文化研究所は、オリンピックを中心とした本学の歴史の構築(プロジェクト1)及びその継承(プロジェクト3)と、それをはじめとしたスポーツ文化に関する研究(プロジェクト2)の両方に率先邁進していく覚悟です。

2025年4月
オリンピックスポーツ文化研究所
所長 依田 充代

設立趣旨

紀元前の時代に、ギリシア人たちは名誉を求めてオリンピア競技祭に集った。そして19世紀に、スポーツの力を信じる一人の青年によって、オリンピック競技祭は現代によみがえることになった。近代オリンピックを再興したクーベルタンの理念は人類の幸福を願い、未来を担う人間を理想へと導く道を開いた。

オリンピックは人類の知的遺産である。それは人々に夢を与え、競技者を成長させ、人間相互の理解と敬意を生み出すために存在する。しかしながら相互の憎しみが広がり、名誉や倫理よりも実利に価値を求める時代にあって、オリンピックも受難の時代を迎えている。

日本体育大学はこれまでメダル獲得においても選手と役員の活躍の面においても、近代オリンピックの歴史とともに歩んできた。これはまさに日本のスポーツ文化の歴史ともいえよう。そして本学はオリンピックに託された人類の夢を守り、崇高な理念を継承していく学問の府でありたいと願う。よってここに、本学の学術的ならびに社会的責務を果たすため、オリンピックの研究を推進し、その成果を次世代に贈るためのオリンピック・スポーツ文化研究所を設立する。

目的

オリンピックの研究を通じて建学の精神を実現し、広く世界の福祉に貢献する。さらには本邦のスポーツ文化の牽引を行う。 具体的には次のような任務を遂行する。

  • オリンピックの歴史、理念の研究(文献収集、国際的な研究情報の収集)
  • オリンピック理念の教育(トップアスリート、学生、指導者)
  • 日体大におけるオリンピックの歴史の構築(卒業生、関係者の品物、練習日記などの文書の収集と展示)「オリンピック博物館」あるいは「日体大オリンピック記念館」等に発展することを検討する。
  • ドーピングの倫理、社会学的研究
  • ドーピング防止教育(アスリート、指導者)
  • 日本スポーツ文化の研究

概要

オリンピックスポーツ文化研究所は、2015(平成27)年4月に本学の附置機関として設置された。その目的は、本学のミッションに謳われている「我が国のスポーツ文化の深化・発展に務めるとともに、オリンピックムーブメントを主導的に推進し、スポーツの「力」を基軸に、国際平和の実現に寄与する」点にあった。こうした趣旨のもと、初代研究所長には当時の学長・谷釜了正教授(現名誉教授)が就任し、所長以下専任教員15名を研究所員として研究プロジェクトがスタートした。そして、翌2016(平成28)年3月には、機関雑誌『オリンピックスポーツ文化研究』第1号(現在も継続中)を発刊するに至った。以来、研究所は、2代目所長(2018-2022)・関根正美教授、3代目所長(2023-)・依田充代教授をリーダーとする体制へと引き継がれ、国内外関係機関との連携や研究プロジェクトの遂行を通して我が国におけるオリンピックムーブメントの一翼を担っている。

2025年度における研究プロジェクトは4つ(「日体大とオリンピック・パラリンピック」、「オリンピック・パラリンピックの理念・価値と現代的課題」、「オリンピックスポーツ文化研究所所蔵品の整理と目録・解題」、『オリンピックスポーツ文化研究』の発刊)で構成されており、所員(7名)及びプロジェクトメンバー(10名)は各専門領域に応じてその活動に従事している。

オリンピックスポーツ文化研究所は、オリンピックをはじめとしたスポーツ文化に関する学術研究を遂行し、その成果を、本学はもちろん国内外に向けて広く社会へと還元していく機関でありたいと考えている。

設立10周年を迎えた2024年度以降は、全国各地に散在しているオリンピックを中心とした本学創立以来の歴史の断片を拾い、紡ぎ、そして、次世代の日体ファミリーへと継承していく事業(プロジェクト1、3)と、オリンピックをはじめとしたスポーツ文化に関する学術研究(プロジェクト2)とに、まさに、車の両輪の如く従事していくことを目指している。