COLUMN コラム

女性アスリートのための栄養講座 「減量」「疲労回復」「筋肉をつける」「貧血予防」目的別・とりたい栄養素とは?

女性アスリートの食事を考える場合、目的によってとりたい栄養素が違ってきます。減量したい、筋肉をつけたい、疲れを早く回復させたい、貧血を予防したいなどの目的に合わせて、どのように栄養素をとればよいか、公認スポーツ栄養士でもある、日本体育大学児童スポーツ教育学部助教の安達瑞保先生に伺いました。

日本体育大学児童スポーツ教育学部助教 安達瑞保先生

共立女子大学大学院家政学研究科食物学専攻修了、修士(家政学)。日本栄養改善学会、日本スポーツ栄養学会、日本体力医学会、アメリカスポーツ医学会等に所属。2015年より日本オリンピック委員会強化スタッフ(卓球)等も務める。アスリートのコンディショニングに不可欠な栄養管理についての講演も行っている。

減量したい場合は、脂質を控えて体脂肪を減らす

トレーニングをするうえでは、糖質はエネルギー源として、たんぱく質は筋肉の修復をはかるために必要なので、不足したくない栄養素です。脂質を減らして、余分な体脂肪を減らすことで、減量を目指しましょう。

まずは余分な体脂肪量がどのぐらいあるかを把握する

体脂肪1kgを減らすためには、約7000kcal減らすことが必要です。
たとえば、2カ月で2kgの体脂肪量を減らすためには、7000×2=14000kcal減らさなくてはいけません。でも、2カ月を60日間とすると、1日あたりは14000÷60=233kcal。そう考えると、それほどむずかしくないように思えませんか?

こうして導き出された目標値を、食事とトレーニングでどのように減らすか、検討していきます。

ただし、減量中に大きくコンディションをくずすことがないように、無理なく進めるためには、1日あたりのエネルギー摂取量の調整は、多くても500kcal程度にしましょう。特に、成長期のアスリートは、「本当に必要な減量か」をよく考えて計画することが大切です。

減量したいときには、食材と調理法、調味料の組み合わせを考える

摂取する脂肪量を減らすためには、肉は脂肪の少ない部位を、魚は脂質が少ない種類を選びます。調味料や調理で使う油の量にも気をつけましょう。たとえば、マヨネーズは大さじ1杯80kcalですが、ノンオイルドレッシングにすれば大さじ1杯10kcalになります。

食材と調理法、調味料の組み合わせを考えることも大切です。バラ肉やひき肉など脂質の多い高エネルギー食品を使いたい場合は、油の使用量が少ない調理法にしましょう。たとえば、ひき肉なら油で揚げるメンチカツより焼いてハンバーグにし、調味料もデミグラスソースではなく、ポン酢にします。さらに、テフロン加工のフライパンを使うと、油の使用量を減らせます。

食事量を減らすと満足できない場合は……

食事量を減らして満足できなかったら、水分をうまく使ってかさ増しするのがおすすめです。ごはんをリゾットにする、魚をあんかけにする、焼き餃子を水餃子にするなどがいいでしょう。

野菜や海藻、きのこはエネルギー量が少なく、たくさん食べてもエネルギー摂取量が増えにくい食品です。たくさん噛むことで、いわゆる「早食い」による食べ過ぎ防止にもなります。野菜の摂取量が少ないと食事量が少なく、満足感が得られないので、使うドレッシングの種類などに気をつけて、しっかり食べるようにしましょう。

疲労回復したい場合は、まず主食をきちんととる

トレーニングで消費されたエネルギーを補うためには、まず主食から糖質をきちんととることが基本です。糖質からエネルギーをつくるために必ず必要なビタミンB1も不足しないようにとりましょう。ビタミンB1の利用効率を高めるアリシンが多い食材を組み合わせた料理がおすすめです。

内臓にも疲れがみえる時は、消化に時間がかかる脂質が少ないものを活用してください。たとえば、脂質の多いとんカツではなく、肉うどんなどにするとよいでしょう。

(女性アスリートの教科書P99より)

屋外の活動では、紫外線の影響も少なくありません。トレーニングなどで体内の活性酸素が増えるため、抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの多い食品をしっかりとりましょう。

(女性アスリートの教科書P99より)

蒸し暑さによる、いわゆる「夏バテ」などで食欲が落ちている場合は、スパイスや香味野菜を使ったり、酢のものなどで酸味があり、さっぱりとしたものにすると食べやすくなります。

(女性アスリートの教科書P99より)

食欲が低下している時に、どんな食品や調理方法が食べやすいと感じるかには個人差があるので、自分に合ったものを見つけることも大切です。

筋肉をつけたい場合は、必要な糖質をとったうえでたんぱく質もとる

骨をはじめ、筋肉や内臓、血液、ホルモン、神経細胞など、体のさまざまなものがたんぱく質でできています。ただし、体にとって重要なエネルギー源の糖質が大きく不足していると、たんぱく質はエネルギー源として分解されてしまいます。日々のトレーニングを維持するためには、糖質の摂取量が不足してしまうような「糖質オフ」の食事は避けたいところです。

また、たんぱく質は、たくさんとればとるだけ筋肉が増えるわけではありません。トレーニングの状況と体格に合わせて補給しましょう。通常トレーニングの場合、体重1kgあたりたんぱく質1.4~1.8gが摂取目標量となります。

1日の摂取目標量=体重( )kg×1.4g

肉、魚、卵、大豆製品、牛乳など乳製品にはそれぞれ特徴があるので、さまざまな食品を組み合わせて、たんぱく質をとることが大事です。ただし、主菜(特に動物性食品)からのみでたんぱく質の目標量をとると、脂質もとりすぎてしまうので、主食や植物性食品からもたんぱく質をとる必要があります。

おにぎり1個分(ごはん100g)のたんぱく質=2.0gなので、1日の摂取目標量から2.0g×食べたおにぎりの個数量のたんぱく質量を差し引いた分を主菜と乳製品からとりましょう。主食からのたんぱく質摂取量が不足しないようにすることが大切です。

貧血を予防したい場合は、鉄の多い食品とビタミンCを組み合わせて吸収率を上げる

ふだんからいろいろな栄養素をとるようにしている場合、鉄は大きく不足しにくくなります。 鉄は吸収率が低い栄養素で、食品中の鉄には動物性食品に多い「ヘム鉄」と、植物性食品に多い「非ヘム鉄」とがあります。「非ヘム鉄」は吸収率が低いですが、たんぱく質とビタミンCを一緒にとることで吸収率が高まります。だからこそ、いろいろな食品を組み合わせて、バランスよく食べることが必要です。

(女性アスリートの教科書P98より)

鉄は一定量が体に蓄えてあり、その貯蔵量が大きく不足していなければ、食品からの鉄の吸収率も調整されます。

ただし、鉄はとり過ぎによって健康が損なわれる可能性がある栄養素のため、アスリートもそれを超えるような過剰摂取には注意が必要です。小学生であれば、30~35mg/日、中学生や高校生の女子選手は40mg/日を超える場合、とり過ぎになるので、気をつけましょう。

関連記事はこちら