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女性アスリートのための栄養講座 健康的な減量に欠かせない、食事の考え方

女性アスリートが減量する際には、むやみに食事量を減らすのではなく、パフォーマンスを低下させないよう、食事内容にも気を配ることが欠かせません。その気をつけるポイントは、どんなところにあるのでしょうか?食事の基本的な考え方について、公認スポーツ栄養士でもある、日本体育大学児童スポーツ教育学部助教の安達瑞保先生に伺いました。

日本体育大学児童スポーツ教育学部助教 安達瑞保先生

共立女子大学大学院家政学研究科食物学専攻修了、修士(家政学)。日本栄養改善学会、日本スポーツ栄養学会、日本体力医学会、アメリカスポーツ医学会等に所属。2015年より日本オリンピック委員会強化スタッフ(卓球)等も務める。アスリートのコンディショニングに不可欠な栄養管理についての講演も行っている。

栄養は、女性アスリートのコンディショニングの1つの柱

アスリートにとってのコンディショニングとは、「ピークパフォーマンスに向けて、心も体もベストな状態にもっていくためにできること」という意味です。体調管理はもちろんのこと、トレーニング方法や食事内容、休息や睡眠、女性アスリートの場合は月経周期にいたるまで、ありとあらゆることを指します。

日々の練習でもベストコンディションを維持できなければ、試合当日にそれより良い結果を出すことはむずかしくなります。アスリートにとって、適切なコンディショニングは勝つために欠かすことができないものなのです。

アスリートのコンディショニングには、休息、栄養が欠かせません。加えて女性の場合は、正常な月経周期という要素も影響します。月経周期のメカニズムを把握したら、次は食事の見直しを行ないましょう。

まず、自分の一日のエネルギー量の収支をつかむ

食事の見直しの中でも重要なのは、自分の一日のエネルギー量の収支を把握することです。一日のエネルギー摂取量から、運動時に消費したエネルギー量を差し引いた「利用可能エネルギー量」が不足していないかどうか、確認しましょう。

まずは、自分に必要な一日のエネルギー量を計算します。次に、実際に食事から摂取しているエネルギー量を計算したら、必要な一日のエネルギー量から差し引いて、エネルギー量に不足がないかを確認します。

エネルギー摂取量については、少し面倒ですが、実際に何をどれくらい食べたのかメモしておくか、食べたものをスマホなどで写真に撮り、あとで計算することが必要です。

(女性アスリートの教科書P93より)

特に小学生から高校生までの成長期のアスリートは、身長など体の成長が著しい時期です。そのため、一日のエネルギー消費量だけではなく、さまざまな体の組織をつくるためのエネルギー量を日々の食事から蓄えておく必要があります。

計算したエネルギー消費量に、日々の食事から蓄えておきたいエネルギー量=エネルギー蓄積量を足したものが、一日のエネルギー摂取目標量になります。

アスリートは、一食でも抜いてしまうとエネルギー必要量がとれません。利用可能なエネルギー量が不足していた場合は、糖質や脂質、たんぱく質を今より多くとることを意識して、摂取カロリーを増やす努力をしましょう。

「太ってしまう」と心配になるかもしれませんが、そのままにしていると、「女性アスリートの三主徴」である「利用可能なエネルギー量不足」「視床下部性無月経」「骨粗しょう症」を引き起こす可能性があります。そうなると、アスリートとしてのパフォーマンスも低下してしまいます。体重を減らす必要がある場合は、指導者と一緒に減量計画を見直して、正しい栄養のとり方を実践することが大切です。

(女性アスリートの教科書P93より)

あなたが食べたものが、あなたの体をつくっている

食べたものは消化・吸収されて、成長や活動に必要な成分となります。つまり、あなたの体は、あなたが食べたものでできているのです。その要素となるのが、食べたものに含まれる「栄養素」です。

特に重要な「糖質」「たんぱく質」「脂質」を3大栄養素といい、生命の維持と運動に必要なエネルギーとなり、体をつくる材料になります。

この3つに「ビタミン」と「ミネラル」を加えたものが、健康に生きるために必要な5大栄養素です。

それぞれの栄養素には役割があります。糖質や脂質、たんぱく質はエネルギー源となり、たんぱく質や脂質、ミネラル類がからだをつくり、ビタミン類やミネラル類は体調を整えます。

健康のバランスを保つには、これらをバランスよくとることが必要ですが、日々の食事では、毎日同じものを食べているわけではなく、食事する場所などもさまざま。コンディショニングにとって、一人ひとりのアスリートの目的に合わせた理想的な食べ方を習慣にすることが大切です。まずは、チェック項目のできていないところから取り組んでみましょう。

(女性アスリートの教科書P95より)

理想の献立とは?「バランスよく」食べるためにできること

アスリートは必要なエネルギー、栄養素をバランスよくとることが必要なので、一日3食、朝・昼・夕食に何を食べるかはとても重要です。

理想は3食とも、「主食+主菜+副菜2品+牛乳・乳製品+果物」です 。

「主食」とは、ごはんやパンなどの体のエネルギー源になる炭水化物(糖質)の補給源です。

「主菜」とは、肉、魚、卵、大豆製品(とうふなど)を使ったメインのおかずで、筋肉や骨などを作るたんぱく質が豊富に含まれています。

「副菜」は、体調を整えるビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含む野菜やいも、海藻、きのこなどを使ったおかずです。おみそ汁などの汁物も副菜になり、海藻や貝類、大豆製品が手軽にとれて便利です。

牛乳・乳製品は骨や歯をつくるカルシウムやたんぱく質、ビタミンB2の補給源で、成長期のアスリートは毎食とりたい食品です。

果物は体調を整えるビタミンの中でも、特にビタミンCの補給源となります。牛乳・乳製品や果物は、食後の補食として摂取してもOKです。

糖質やたんぱく質、脂質は単独ではうまく代謝されません。相互に影響し合いながら、ビタミンやミネラルの力も借りて、エネルギーや体の組織に変化することができるので、バランスのよい食事をとることが大切です。

とはいえ、一日3食を理想通りにとるのは簡単ではありません。一つの料理で主食と乳製品がそろうよう、トーストをチーズトーストにしたり、野菜をとる量が少なかったら、野菜ジュースを利用することから始めてもいいでしょう。野菜ジュースは、飲んだ量の半分の野菜をとったと評価できます。実際に野菜を食べた場合に比較すると、食物繊維など多くはとれないものもありますが、ビタミンを補給することができます。

競技でよい結果を出すためにも、毎日の食事で、少しずつ栄養のバランスをとれるようになるといいですね。

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