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バズーカ岡田先生の女性のための筋トレ講座 女性アスリートにはどんな筋トレが必要?基本の筋トレの方法

女性アスリートがよりよいパフォーマンスを発揮するためには、筋力トレーニングは欠かせません。いわゆる「筋トレ」の効果的な方法や男性との違いなどについて、骨格筋評論家で「バズーカ岡田」の異名を持つ日本体育大学体育学部准教授・岡田隆先生に伺いました。
第1回は、アスリートなら誰もが知っておきたい、「筋トレの基本」とその方法を紹介します。

日本体育大学体育学部教授 岡田隆先生

1980年愛知県生まれ。日本体育大学大学院修了(体育科学修士)、東京大学大学院博士過程単位取得満期退学。理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。現在、日本オリンピック委員会強化スタッフとして、柔道全日本男子チームの体力強化部門長を務める。ボディビルダー、骨格筋評論家「バズーカ岡田」としても活動している。

公式サイト:http://bazooka-okada.jp/

Youtube:「バズーカ岡田の筋トレラボ」
https://www.youtube.com/channel/UCrV1T0LCGPgGiBspaL2pZHw

基本的な筋トレは、どのスポーツでも大切

競技をするうえで、パフォーマンスを上げるためにフォームを改造したり、タイミングを変えてみたりといった、技術面にフォーカスすることは少なくありません。しかし、技術はそれを支える体があってこそ。

現在、日本オリンピック委員会の強化スタッフとして、柔道全日本男子チームの体力強化部門長を務めている岡田先生は、自らの経験から、筋力トレーニングの大切さを実感したといいます。

「私が柔道全日本男子チームに筋力トレーニングの指導に関わり始めたのは、2012年のロンドンオリンピックの後から。それまでは、柔道のようなフィジカルが重要な競技でも筋トレをあまりしていませんでした」。

筋トレを行なった成果は、4年後の2016年のリオデジャネイロオリンピックで現れました。「柔道男子全7階級メダル制覇」という結果を残すことができたのです。

「そのことから思うのは、どれだけ技術が卓越していても、フィジカルがないと負けてしまうということ。日本柔道の技術力は世界一ですから、それを支えるフィジカルがあれば勝てる。競技のパフォーマンスとフィジカルとは切り離せない、という事実です」。

現在では、柔道全日本女子チームも岡田先生の女性の教え子がトレーニング指導をしていて、男子と同様のウエイトリフティングやパワーリフティング、ボディビルなどの要素を含んだ筋トレを行なっています。

「柔道界は、ここ数年でこのような技術とフィジカルを両輪とする考え方に変わってきました。でも、他のスポーツでは、まだまだ筋トレの重要性に気づいていないアスリートや指導者が多いかもしれません」

全身の筋肉を鍛えることの重要性

競技のパフォーマンスには、技術と同様にフィジカルも重要とわかったところで、では、実際にどのようなトレーニングをすればいいのでしょうか。また、競技によって鍛えるべき筋肉は異なるのでしょうか。

「トップアスリートでは、特殊な種目やプログラムのトレーニングを中心に行うということがあります。それを知って、同じトレーニングをしようとする人がいますが、これは間違い。なぜなら、トップアスリートはすでに全身の筋肉を鍛えた時期を過ごしてきたうえで、特殊なトレーニングに取り組んでいるからです」。

つまり、ある特殊なトレーニングが効果的になるのは、かなりレベルの高い人ということ。

「一般のアスリートの場合、まず全身の筋肉をまんべんなく刺激することがたいせつです。そうして全身の筋肉を鍛えたうえで、各自の競技によって、あるいは個人によってより必要性の高い筋肉に対するトレーニングの比重を増やすといいでしょう」

基本的なトレーニング方法には、以下のようなものがあります。

上半身

プッシュアップ<胸の筋肉を鍛える>

①両手の幅を肩より手1つ分外側に構え、肩からつま先までが一直線にして、腕立て伏せの姿勢になる。

②肩甲骨を寄せて胸を張り、両肘を曲げて胸が床すれすれになるまでゆっくり沈める。そのままの姿勢でゆっくり①に戻す。

ショルダープレス<肩の筋肉を鍛える>

①両脚を肩幅に開いて背筋を伸ばして立つ。両わきを開いてダンベルを持ち、耳の高さに構える。

②背筋を伸ばしたまま、ダンベルを頭の上に持ち上げて、両方を近づける。そのままの姿勢で①に戻す。

ベントオーバーローイング<背中の筋肉を鍛える>

①両足を腰幅に開いて背筋を伸ばして立つ。バーベルを膝の前で持ち、膝を曲げて上体を45度程度まで前傾させる。

②胸を張りながら、両肘を後方に引き、バーベルを腰の高さまで引き上げる。そのままの姿勢で①に戻す。

ツイストシットアップ<おなかの筋肉を鍛える>

①仰向けの姿勢で両膝を立て、両手を胸の前でクロスさせる。頭を床から浮かして、腹筋に少し力を入れる。

②息を吐きながら、頭から上体を起こしながら、左右にひねる。完全に起き上がると腹筋の力が抜けてしまうので、腰が床から離れる程度に。腹筋に力を入れたまま、①に戻す。

下半身

スクワット<お尻と太もも前面の筋肉を鍛える>

①両脚を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ち、バーベルを肩にかつぐ。

②背筋を伸ばしたまま、太ももが床に平行になるまで、お尻を引きながら両ひざを曲げる。そのままの姿勢で①に戻す。

ブルガリアンスクワット<お尻の筋肉を鍛える>

①後方に台を置く。背筋を伸ばして立ち、両手にダンベルを持って、後方の台に片脚をかける。

②膝がつま先より前に出すぎないように、真下に腰を落とす。そのままの姿勢で①に戻す。

デッドリフト<背中の筋肉を鍛える>

①両脚を肩幅に開いて背筋を伸ばして立つ。バーベルを体の前で両脚の幅より広めに、逆手で持つ。

②お尻を後ろに突き出すようにしながら、バーベルをすねの高さにまっすぐ下ろす。そのままの姿勢で①に戻す。

こうした基本のトレーニングは、ジムに通わなくても、自重やダンベル、バーベル1本があれば、学校でも家庭でもできます。まずは、この基本の筋トレを続けて、総合的な筋力を上げていくとよいでしょう。
女性アスリートにも欠かせない、筋力トレーニング。強く、美しく、競技力を上げるために、正しい知識を持ってトレーニングに取り組めるといいですね。

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