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事業内容

文部科学省委託事業
「大学スポーツ研究活動資源活用事業(平成23年度~25年度)」

事業の趣旨

オリンピック競技大会において活躍している選手の中には現役の大学生や大学時代の選手強化活動を基盤としている者も多く含まれている。

本事業は、オリンピック競技大会に選手を輩出している大学に着目し、各大学が独自の研究資源等を活用し実施している先駆的な選手強化活動を推進し、スポーツ研究活動等の深化を図る。また、大学と日本オリンピック委員会(JOC)、各競技団体(NF)、国立スポーツ科学センター(JISS)との連携を促進し、その研究成果等を共有し、実践的な普及を行うことにより、我が国の競技力向上を図るものである。

各年度の事業プロジェクト

平成23年度:「コーチ実践指導力の向上プログラム開発」

事業の趣旨・目的

我が国の国際競技力向上について考えるとき、国立スポーツ科学センター(JISS)やナショナルトレーニングセンター(NTC)等で我が国のトップアスリートをサポートし、国際舞台で活躍できるようにしていくことが重要であることは疑いの余地はない。このことに加え、世界で戦える水準にまでアスリートを育てていく“コーチング”の質を向上させることも重要である。人材育成の場である大学には現在そして次世代のより優秀なコーチを育成していくことが期待される。特にトップアスリートを対象としたコーチは日進月歩のハイパフォーマンス・コーチングを学び、自身の専門的能力を継続して向上させていくこと(継続的職業専門能力開発Continuous Professional Development: CPD)が必要であり、そのためのプログラムを最先端のコーチングを研究する大学が準備することには大きな意義がある。本学はこれまでにも多くの優秀なコーチを輩出してきた。その実績を活かし、さらに高度なコーチング実践力を備えたコーチを育成するプログラムを開発することは、我が国のコーチングの質を向上させることにつながり、短期的にも、長期的にも日本の国際競技力を支える礎になると期待できる。

また、本学は国際クラスの学生アスリートに対して時間、空間、そして機会の提供を行うことで、日本の国際競技力向上にも貢献してきた。日本が夏のオリンピック大会で獲得したメダル総数の約4分の1を本学関係者が獲得しているという事実が、本学の貢献を物語っている。パフォーマンスをコーチからの視点、スポーツ科学研究者からの視点、トレーナーからの視点など、実に様々な角度から分析し、その結果をアスリートに還元してきたことがこの結果を導き出したと考えている。
近年のスポーツ科学研究の発展はめざましく、パフォーマンスを分析する手法は、より高度で専門的な技能を必要とするようになってきた。そのため、パフォーマンス分析の領域を担当するテクニカル・スタッフや体力トレーニングの専門家、スポーツ心理学の専門家、栄養学の専門家などとコーチがチームを組んでアスリートをサポートすることが行われるようになってきた。このように競技力向上を支える各領域の専門化が進み、高度な取り組みがされるようになった今であるからこそ、このサポートチームをまとめていく能力がコーチに必要とされてきたことも疑いのない事実であろう。

このように現在のコーチには実に様々な知識や能力が必要とされる。それが様々な教育機関やスポーツ団体がスポーツ科学を軸としたコーチ養成カリキュラムを準備している背景となっている。しかしながら、コーチにとってスポーツ科学の知識を有していることは必要なことであるとはいえ、それらの知識を現場に適用する力が乏しければ、コーチングの質を高くすることは困難である。コーチングは常に人間と人間との間で起こっていることであり、コーチの言動や行動がアスリートに大きく影響する。コーチが何を言い、どのような振る舞いを取るのかは、そのコーチが人生において築いてきた哲学観によって決まってくる。優れたコーチたちの哲学観を顕在化させることができれば、将来より良いコーチを育成していくひとつの参考となることは間違いない。また、コーチングは机上で起こっているのではなく、現場で起こっているのであり、現場での実践を通して効率的にコーチング実践に磨きをかけていくことができれば、スポーツ国際競技力の向上は当然のことながら、より水準の高い文化としてのスポーツを実現させることができると考えている。

そこで本事業では、これまで本学が蓄積してきたコーチの指導実践力に着目し、学内コーチの指導法等の現状の分析・評価法の確立を行うとともに、国内外の新しい情報と映像分析機器を活用して、さらなるコーチの指導実践力向上を図るためのプログラムの開発を行った。

プロジェクトメンバー
プロジェクトリーダー   髙橋 健夫 大学院体育学研究科長
プロジェクトスタッフ 体操競技 具志堅 幸司 教授
畠田 好章 准教授
  バレーボール 森田 淳悟 教授
根本 研 准教授
  スポーツ科学 三輪 康廣 教授
伊藤 雅充 准教授
向本 敬洋 助教
小泉 卓也 助教
  研究協力者 馬場 大拓 助教
関口 遵 大学院博士後期課程トレーニング科学系

平成24年度:「コーチ実践指導力の向上プログラムの開発・展開」

事業の趣旨・目的

現在、トップアスリートの活躍にはスポーツ科学の存在が欠かせなくなってきている。我が国でも国立スポーツ科学センターやナショナルトレーニングセンターの存在は国際競技力に大きな影響を与えている。現に国立スポーツ科学センター等で実施しているマルチサポート事業はオリンピック大会を始め、様々な国際競技大会での日本人選手の活躍に大きな貢献をしてきている。

現在のように、かなり高度化したスポーツ競技の世界では、より高いレベルに到達するために、できるだけ早い段階からアスリート育成を行っていく必要があると考えることも可能である。それが日本も含め、世界各国が行っているタレント発掘や育成事業という形で表れている。様々な分野でエキスパートの域に達するまでには10,000時間(およそ10年間)のdeliberate practiceが必要であると言われている。このことから考えれば、より高いレベルのスポーツパフォーマンスを手に入れるためには、できるだけ早い段階で、どのような能力に優れるのかを見いだし、それぞれの可能性に応じたトレーニングを積むというのは、意味のあることだと考えられる。

スポーツ科学サポートやタレント発掘・育成についてはこれまで多くの研究者や団体が取り組んで行ってきており、着実にそのレベルが向上してきていることは紛れもない事実であろう。しかし、忘れてはならないのが、スポーツ科学サポートを活用するのも、高いポテンシャルを有した子どもたちを伸ばしていくのも、コーチの能力にかかっているということである。日本の国際競技力の総体を考えた場合、世界水準で戦えるアスリートを育成し、戦っていく上で、個々のコーチたちがきわめて重要な役割を果たしていることは疑いようのない事実である。

日本体育大学は、創立から122年にわたり世界レベルのトップアスリートを数多く輩出してきただけでなく、グラスルーツの競技者からトップアスリートまで、幅広い競技者を対象に直接働きかける優れた指導者を計画的に育成し、大きな社会的評価を得てきた。その背景には、優れたコーチの育成を重要な使命として受け止め、長年にわたりコーチ教育のあり方に関する研究を推し進めてきたことがある。その研究成果を実践の場に活用することを目的として、平成23年度には大学院体育科学研究科博士前期課程の体育実践学コース・コーチング学系を新設し、質の高い実践力を有したスーパーコーチャーの養成を開始し、平成25年3月には10名の第1期生が修了した。

平成23年度事業において、海外諸機関と連携することで大学院を中心とする本学モデルのコーチ指導法プログラムの開発が順調に進行し、また映像分析やパフォーマンス分析手法をコーチング能力向上に役立てる手法が確立されてきた。これらの成果を踏まえ、平成24年度の事業では、これまで本学が蓄積してきたコーチングに関する知識と経験を最大限に活かし、新設した大学院コーチング学系との緊密な連携のもと、国際競技力向上に資するコーチ教育プログラムの改善・充実を図った。また、本学のアスリート育成システムは、コーチ個人の高度なコーチング力に加えて、全国的なコーチネットワークに支えられているが、国内外のコーチおよびコーチングの調査や、エリートアスリート育成システムの調査・分析を通して、この育成システムの再構築を試みた。

本事業を遂行中に、日本全国で学校部活動における体罰や、ナショナルチームレベルにおける身体的・精神的暴力の問題が明るみに出て、スポーツ指導のあり方に関する国民的議論が様々な場所で展開されるようになった。これらの議論は、コーチが何をするべきか、何をしてはならないとかといったことが中心であるが、ここから一歩先へ進むためには、「何」を「どう」やるのかという観点で物事を見ていくことが必要である。これまでのコーチ教育は、コーチング学と並んで、「何」を中心としたものに終始していた。このことは日本だけの問題ではなく、世界的にコーチ教育の課題とされている点である。しかし、本事業では、大学院実践学コース・コーチング学系との連携により、HOWについて扱い、アスリートがより質の高いトレーニングに対して、より高いレベルのモチベーションを持って、エンジョイしながら、ハイパフォーマンスを追い求めていくというコーチングを模索し、ある一定の成果を得ることができた。

プロジェクトメンバー
プロジェクトリーダー   高橋 健夫 大学院体育学研究科長
プロジェクトスタッフ 体操競技 具志堅 幸司 教授
畠田 好章 准教授
  バレーボール 森田 淳悟 教授
根本 研 准教授
  柔道 山本 洋佑 教授
  スポーツ科学 三輪 康廣 教授
三宅 良輔 准教授
伊藤 雅充 准教授
向本 敬洋 助教
小泉 卓也 助教
  研究協力者 関口 遵 大学院博士後期課程トレーニング科学系
橋本 浩司 大学院博士後期課程トレーニング科学系

平成25年度:「スポーツコーチの継続的専門能力向上プログラムの開発と展開
―日体大大学院モデルをベースに―」

事業の趣旨・目的

エリートアスリートは一朝一夕にできあがるわけではなく、幼少期からの質の高い運動遊び経験や継続的トレーニングを経てその高水準のパフォーマンスを実現させている。各段階で関わるコーチの存在が持つ影響力は大きく、日本の国際競技力向上を考えれば、各段階で関わるコーチ全てのコーチング能力を向上させることが重要であることは明白である。しかし、コーチは自分が競技者時代に経験したコーチングを次の世代に対して行っていく傾向にあり、日進月歩の状態にある現代のハイパフォーマンススポーツに対応できていない場合も少なくない。そこで本学では大学院を中心として、日本のコーチング水準を上げるための研究と教育活動に力を注いできた。そして、平成23年度の本事業において、大学院を中心とする本学モデルのコーチ指導法プログラムの開発を行い、平成24年度事業においてはプログラムをさらに発展させることに成功した。

これらの成果を踏まえ、平成25年度は本学モデルの大学院コーチ教育プログラムをベースに、全国各地のスポーツコーチが継続して専門能力を向上させていくためのプログラム(CPDプログラム)を開発し展開する。最新のコーチング学に全国のコーチが触れる機会を設けることで、コーチの経験に頼るコーチングからエビデンスに裏付けされたコーチングへの意識の変化を促す。またそれは、長期的な競技者育成(一貫指導)の重要性の認識を促し、各発育発達段階や競技者の能力、ニーズに合わせたコーチングが可能となり、より高い水準の競技力開発へとつながる。それと同時に、コーチのコーチング能力向上は、高い水準の競技力を備えた競技者が育つ人的環境の整備を意味し、直近の競技力だけでなく、将来にわたって高い国際競技力を維持することにつながる。

プロジェクトメンバー
プロジェクトリーダー   西條 修光 大学院体育学研究科長
プロジェクトスタッフ バレーボール 森田 淳悟 教授
根本 研 准教授
  サッカー 鈴木 政一 教授
矢野 晴之介 助教
  コーチング学 三輪 康廣 教授
伊藤 雅充 准教授
小泉 卓也 助教
関口 遵 研究員
山内 亮 研究員
古川 佑生 研究員