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日本体育大学と東京大学の間にいて想うこと その1 小笠原 理紀先生について【故小笠原理紀氏遺児育英基金のお願い】

 2023年9月に39才という若さで小笠原 理紀先生が急逝されたことがいまだに私に大きな陰を落としています。
 今回はその小笠原先生についてご紹介したいと思います。ただし体育研究所のコラムですので、この話題を披露する前提として本学と東京大学と私の関係を少し説明いたします。

 私自身は東京大学 教養学部を卒業後、東京大学大学院にて修士、博士の学位を取得し、その直後に日本体育大学に赴任しました。以来今日まで本学にお世話になっています。

 日本体育大学は東京大学教養学部 旧保健体育科との縁が深く、それぞれ生理学、スポーツ医学の第一人者である広田 公一先生、中嶋 寛之先生は東京大学教養学部 旧保健体育科を退官後、日体大教授に赴任されました。逆に日体大を卒業して東京大学教養学部 旧体育教室に赴任された先生(現順天堂大学 客員教授 阿部 孝先生、現国士館大学 教授 船渡 和男先生、現鹿屋体育大学 学長 金久 博昭先生、現平成帝京大学 伊藤 博一先生、現東京大学教養学部 助教 小谷 鷹哉先生)もいらっしゃいます。
 東京大学にとどまらず、日体大OBが超有名中高進学校の体育科教員になっている例も枚挙に暇がありません。この話題は機会があればまた別の機会に取り上げたいと思います。

 東京大学駒場キャンパスで大学院生であった私に指導教員の林 利彦先生が「面白い先生が駒場に赴任しましたよ」と石井 直方先生をご紹介いただきました。今でこそ多彩な東大教授がいますが、石井 直方先生は東大理学部卒のボディビルディングアジアチャンピオンであり、かつ超一流科学雑誌Scienceに論文を発表するというその当時では(今でも)極めて稀有な存在でした。林先生はその石井先生を私の博士論文審査委員としてご推薦くださいました。その縁もあって日体大赴任後、私は石井 直方先生と共同研究をすることになります。林先生の慧眼には今もって敬服するのみです。

 石井 直方先生との共同研究は、石井 直方先生の大学院生の皆様が日体大に来て実験・研究をする形で進められました。もちろん私の研究室にも日体大大学院の学生さんがいらっしゃいますので、日体大の中に日体大と東大の大学院生さん同士が切磋琢磨しながら研究を推進する環境が醸成されました。
 この人的環境の多様性は間違いなく日体大における研究の推進力になりました。ひとつ注意すべき点はこの人的環境のもと、ほぼ全ての実験結果は日体大で出されたことです。これは日体大に東大と伍する研究環境があることを示しています。

 このような背景があって日体大、東大を問わず数多くの大学院生さんたちが私の研究室で優れた成果をあげてくださいました。とりわけ本コラム冒頭にご紹介した小笠原 理紀先生はその研究能力、研究に対する熱意や態度など研究者として卓越した点が数多くあり、かつ優れた研究業績を数多く残しました。またその気さくな性格から多くの研究者に慕われており、日本体力医学会をはじめとする国内外の学会において多くの研究者のリーダー的存在でした。亡くなる直前には世界の骨格筋研究者とともに最近の骨格筋肥大研究をまとめたバイブルのような総説論文を発表されました。

 小笠原先生はもちろん日体大との縁も深く、大学院生時代には3年間日体大で実験をしましたし、2023年2月3日には日本体育大学にて学術セミナーにおける講師をしてくださいました。本学の先生方との親交も深く、岡本 孝信教授や須永 美歌子教授、岡田 隆教授、田村 優樹准教授、鴻崎 香理奈助教とは旧知の仲でした。

 2023年9月23日の夕方に小笠原先生と親交の深かった立命館大学 藤田 聡教授より、小笠原先生が急逝されたとの一報を受けました。晴天の霹靂とはまさにこのことでした。そして、いい年をして情けない話ではありますが、つい最近までこの事実を全面的に受け入れることができませんでした。ただ徐々に彼の死を受け入れると同時に残されたものが行うべきことはなにか、ということも真剣に向き合いました。

 小笠原氏はまさに研究に命を燃やしていたと思います。私自身は、年齢のせいにしてはいけませんが、ややもすれば言い訳が多くなるような傾向もありました。しかし今後の人生において彼の分まで研究に向き合っていこうと改めて決意しました。もちろん私のことだけではなく、日体大の研究環境のより一層の向上にも情熱をささげるつもりです。


 中里 浩一



 補遺

 小笠原 理紀氏は若くして逝去されました。ご遺族にはご夫人と二人のお子様(7歳、5歳)がいらっしゃいます。そこで小笠原氏の職場であった産業技術総合研究所 戸井 基道先生を中心にして故小笠原理紀氏遺児育英基金が設立されました。リンク先の趣意書をご覧になっていただいて、賛同いただける方は振り込みをお願いいたします。


  故小笠原理紀氏遺児育英基金のお願い
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