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社会への還元を目指し大胆に行動する

 今回は研究プロジェクト2を仰せつかっている岡田が担当させていただきます。2023年4月から半年間、サバティカル研修制度でイスラエルに滞在させていただきました。突然の戦争で急遽帰国し、サバティカル研修は中止としましたが、せっかくなのでイスラエルでの研究生活で感じた事を、まだ記憶が温かいうちに書かせていただこうと思います。

 イスラエルは建国してまだ75年、国土は四国ほど、人口は約940万人と決して大きくはない国です。そのイスラエルというとテロ、ガザ地区、ヨルダン側西岸、パレスチナ問題などの言葉がマスメディアの影響で連想され、怖いイメージを持つ方が多いと思います。しかし私がいた期間、女性でも夜に一人で歩けるほど治安はとても良かったです。テロが起こるまでは。そして地域としては、長く複雑な歴史を持ち、ユダヤ教、キリスト教が生まれた地であり、イスラム教にとっても一つの聖地という事から、宗教の戒律に厳しい国というイメージではないでしょうか?実際に暮らすまでは私もそうでした。しかし現在では第二のシリコンバレー、スタートアップネイションと呼ばれるほどハイテク企業の興隆が著しく、非常に先進的な国でもあります。また周辺国に脅威が多い事もあり、サイバーセキュリティの分野では世界一です。皆さんのPCやスマホ、毎日見るインターネットの中には実はイスラエル産の技術が入っていて、知らず知らずお世話になっているのです。このように日本とは歴史、文化、環境が異なるこのイスラエルの研究者達から感じた事をお伝えします。

 私はテルアビブ大学のZeevi Dvir教授、ウィンゲート大学のSmadar Peleg博士らと共に動的関節制御に関する研究をしてきました。ウィンゲート大学はイスラエルにおける体育・スポーツの拠点であり、本学のように体育教員養成の学舎でもあります。無酸素性エネルギー供給能力を評価するウィンゲートテストを連想された方もいらっしゃると思いますがその通りで、それを生み出した地です。日本とは大きく異なる文化と社会背景を持つイスラエルの研究者達は、当然私達とは思考も生き方も異なるので、とても良い刺激をいただきました。私が彼らから感じた事を簡潔に表現するならば、社会への還元を目指して大胆に行動する、という事です。とにかく、成果物を世に出す事への意識が強いように感じました。なぜそうなるのか聞いたところ、少し前までは国力が十分ではなく、必要性の高い分野に直結する事、社会に還元しやすい実践的な事に大胆に取り組む必要があった、ということのようです。まだ早いかな、というレベルでも現場で使ってそこで磨いていく。完成度が100%になるのを待ってから世に出すのではなく、早く世に出し、市場に問い、市場で磨く、という感覚なのでしょう。

 私個人の感想で恐縮ですが、一方日本は、民族や文化が作り出す特性なのか、慎重であり緻密性にとても長けていると思います。これは柔道やボディビルの世界レベルの大会でも感じてきた事です。日本の強みであるこの緻密性を他の追随を許さぬほどに磨き上げつつ、社会への還元に向けた大胆な行動力も併せ持つ。イスラエルの研究者達と共に過ごし、私はこうなりたいと思いました。実際にビジネスの世界では、日本とイスラエルとのコラボレーションは双方に不足する部分を埋めるとても重要な取り組みと考えられ交流が活発化しています。私の滞在中も西村経済産業大臣や日本の多くの起業家がイスラエルに訪問するなどしていました。研究者としても、互いに高め合える関係を築き、日本社会に積極的に貢献できる活動を心がけていきたいと考えています。

 岡田 隆

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