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女性アスリートのコンディショニングに関する研究成果を教育的支援に活かすことを目指して

 プロジェクト研究4では、「女性の健康とスポーツ」をテーマに掲げ、月経周期に着目し、性ホルモン濃度のゆらぎが、コンディショニングにどのような影響を及ぼすのか研究し報告をしてきました。近年は、多くの競技種目で日本の女性アスリートが素晴らしいパフォーマンスを発揮しています。しかしながら、月経困難症への対処など、月経期のコンディショニングに悩む女性アスリートは少なくないことも指摘されています。競技開始年齢が早い競技種目もあり、成長期をはじめ、さまざまなライフステージに応じたコンディショニングが実践できるよう、エビデンスに基づいたヘルスケアに関する教育的支援が急務であると考えました。そこで作成したのが、月経や性ホルモンに関する正しい知識を習得し、痛みを我慢して練習を行うのではなく、婦人科を受診し適切な対処を行いながらスポーツを楽しむことができる選手、それを支える指導者となることを目的とした「はじめての月経コンディショニング学(2019)」です。

 さらに、2021年度は、コンディショニングに関わるオーラルヘルスについて研究を行いました。コンディショニングにおいて、栄養状態を適切に保つことは重要です。女性アスリートのより良いコンディションを維持するためには、トレーニングに応じたエネルギーや栄養素を補給することが必要ですが、食事から栄養素を摂取し、消化吸収を行う最初の入口が口腔です。女性ホルモンの影響により、女性は男性よりも口腔内環境が悪化しやすいことが指摘されています。さらに、アスリートは水分補給を正しく行えないと脱水を生じやすいこと、口呼吸により口腔内が乾きやすいこと、エネルギー補給用の補食や水分補給時に糖分を多く含むスポーツドリンクなどの食品を多く摂取し、さらに活動中は歯を磨くことが難しい状況にあることから、う蝕や歯周病に罹患しやすい状況にあります。このような状況にあるにも関わらず、女性アスリートの口腔内環境に関する研究が進んでいないばかりではなく、パフォーマンスを発揮するための水分や補食の活用に関する情報提供において、口腔環境を悪化させない対策についてはふれられていないのが現状です。

 研究プロジェクト4では、月経周期が口腔環境に及ぼす影響や、運動負荷に対する月経周期と口腔内環境応答について実態を調査し検討を行いました。今後の展望として、その科学的知見を教育プログラムの構築へと活かしていくことを目指しています。

 スポーツ庁委託事業 女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究」においては、教育支援教材として「女性アスリートの歯とお口の健康BOOK(2022-01)」を作成しました。なぜ、口腔環境を整えることが大切なのか、思春期の女子は女性ホルモンの影響による歯ぐきの腫れに注意が必要なこと、口腔環境のセルフチェックと定期的な歯科検診の重要性などを、わかりやすく解説しています。

今後も、研究により女性アスリートのコンディショニングに関わる課題の検討と、その科学的知見を女性アスリートのコンディショニングに活かしていく手立ての検討とを両輪とした、女性アスリートへの健康支援の実現が責務と考えています。

※「女性アスリートの歯とお口の健康BOOK」は日体大リポジトリより検索しダウンロードできます。
日体大リポジトリ:https://nittaidai.repo.nii.ac.jp

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