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オリンピック基礎知識

オリンピックの起源

 古代オリンピックは紀元前776年に古代ギリシアのエリス地方にあるオリンピアで始まったとされている。オリンピアはゼウス神の聖地であり、オリンピア競技はゼウス神に捧げる競技祭として始まったとされる。それは4年ごとに開催される汎ギリシアの祭典競技であった。古代ギリシアではポリス間で慢性的な争いが起こっていたが、祭典のために「エケケイリア(聖なる休戦)」と呼ばれる休戦期間を設けた。出場者はポリスの自由市民に限られており、優勝者にはオリーブの冠が授けられた。紀元前8世紀のオリンピックは貴族である競技者が名誉のために戦った。しかしそれ以降、ポリスの民主化と共に競技者の階層も広がった。

 古代ギリシアの競技精神を表すものが「カロカガティア」である。これは身体的にも道徳的にも優れていること、すなわち「美にして善なること」を意味している。古代オリンピックは時代と共に、競技者のプロ化やショー化されるようになった。それでも、この「カロカガティア」は競技精神の理想像として古代オリンピックの価値に位置付いている。ローマ時代になり、テオドシウス帝が起源392年にキリスト教を国教と定めたため、オリンピア進行は異教として禁止されることになり、393年を最後に古代オリンピックは終わりを告げた。

現在のオリンピック

 現代のオリンピックは、フランスの教育者ピエール・ド・クーベルタン男爵によって1896年第1回大会がアテネで開催された。クーベルタンは古代ギリシア・ローマ文明にあこがれを持ち、古代オリンピックにならった競技祭を構想した。その意味で、彼はオリンピックの再興者、復興者とも呼ばれる。クーベルタンがオリンピックを始めようとした根本動機はスポーツを通じて人間を変革することになった。しかしクーベルタンが考えたオリンピックは、単なる「スポーツの祭典」ではなく、精神の発達を願う芸術祭も含めてのものだった。実際に、1912年のストックホルム大会から1948年のロンドン大会まで芸術競技が開催され、1952年第15回ヘルシンキ大会から「芸術展示」、1992年の第25回バルセロナ大会からは「文化プログラム」として実施されている。

 古代オリンピックはギリシア人によるギリシア人のためのオリンピックであった。しかし、近代オリンピックは世界中にオリンピズムの理念を広めることを目指して行われている。

 その特徴としては、まず「平和の祭典」であることが挙げられる。クーベルタンは「スポーツを通じて平和な世界の実現に寄与する」ことをオリンピックの目的に掲げた。また、「勝敗だけではなく、ルールを遵守し正々堂々と全力を尽くす」という「フェアプレーの精神」がオリンピックでは重視される。

パラリンピック

 パラリンピックは障害のある人々が参加する世界最高峰の大会である。現在はオリンピック終了後に同じ会場を使って開かれている。障害者スポーツは、もともとイギリスの医師であったルードヴィッヒ・グットマンが第二次世界大戦で脊髄に損傷を負った兵士の治療にスポーツを取り入れたことから始まったとされている。パラリンピックの原点は1948年のロンドン大会の開会式の日に病院内でアーチェリー大会を開いたことにあるとされる。1979年の大会では脊髄損傷者だけではなく、視覚障害者や切断の選手も出場するようになり、1980年の大会では脳性麻痺の選手の出場が認められた。

 パラリンピックの「パラ」の意味は、当初は下半身麻痺を表す「パラプレジア(Paraplegia)」にちなんでいたが、1985年に「もう一つの」という意味で「パラレル(parallel)」に意味づけされている。つまり、パラリンピックとは、「もう一つのオリンピック」という意味であり、1988年のソウル大会からは、これが正式名称になっている。

オリンピズム

 オリンピズムとは近代オリンピックの理念であり哲学的原理である。オリンピックがワールドカップなど他のスポーツビッグイベントと決定的に異なる点は、大会の根底にオリンピズムが存在している点である。

 クーベルタンは、人間における肉体と精神の調和を一つの理想とし、スポーツは人間精神を高めるものであると考えた。彼はスポーツで人間が理想に向けて努力する姿を「努力の祭祀」と呼んだ。彼が重視したものはスポーツ(競技)だけではない。芸術や文学などの面からもスポーツを通じた人間の理想の実現を願った。クーベルタンのオリンピズムはスポーツと芸術を通じた人間復興の理念であり、平和への道であり、教育改革であった。

 現在はクーベルタンの思想を受け継ぐ形で、時代と共に変更を加えられながらIOCによって定義づけられ、現代オリンピックの精神となっている。たとえば、「オリンピック憲章」の根本原則には次のように書かれている。

  1. オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である。
  2. オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。

(2011年版オリンピック憲章、日本オリンピック委員会)

このようなオリンピズムの理想を現実化するための活動が「オリンピック・ムーブメント」と呼ばれる。

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