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女性の健康とスポーツに関する研究の紹介

 プロジェクト研究4では「女性の健康とスポーツ」をテーマとして掲げており、女性の生理的特性(月経、妊娠、出産、更年期など)を考慮したコンディション管理に役立つエビデンスを構築し、具体的な改善策を提案することをめざして研究に取り組んでいます。メンバーは、私(須永美歌子)の他、岡本美和子教授、安達瑞保助教の3名です。それぞれ、運動生理学、母子保健学、スポーツ栄養学を専門としています。

 2021年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、各国を代表するアスリートが、これまでの厳しいトレーニングで培った「技」を思う存分に発揮し、最高のパフォーマンスを魅せてくれました。東京オリンピックでの日本人選手のメダル獲得数は、58と過去最高となりました。そのうち、混合3種目を除いたメダル総数は女性30に対し、男性は25と2000年シドニー大会以来、5大会ぶりに女性が上回りました。また、金メダル獲得数は、女性14、男性12であり、これで5大会連続して男性を上回りました。総数と金の両方で女性が優位なのは初めてのことです。このように、日本の女性アスリートの活躍はめざましく、国際競技力は急激に向上しています。

 アスリートがピークパフォーマンスを発揮するためには、コンディショニングが欠かせません。コンディショニングとは、こころやからだの調子(コンディション)を整えることです。アスリートは試合当日だけでなく、普段からコンディショニングを行い、常に良いコンディションを保ちながらトレーニングに取り組むことが求められます。しかし、女性の場合には、月経にともなう様々な症状がコンディションを低下させることがあります。

 本プロジェクトでは、女性特有の生理現象である月経周期に着目し、性ホルモン濃度のゆらぎが心身のコンディションに与える影響について研究しています。最近の研究でわかったことは、月経随伴症状や主観的コンディションの変化は血中タンパクの発現に影響を与えていること、また運動による血中タンパクの発現が卵胞期(月経中)と黄体期(月経前)で異なるということです。これらのタンパク質が生体に及ぼす影響を知ることで、生体内で何が起きているかについて「見える化」が可能になり、適切なコンディショニング法を提案できるのではないかと期待しています。

 また、月経教育に関する小冊子(はじめての月経コンディショニング学:https://tinyurl.com/yf2fvw2y)を作成しました。これは男女問わず、ぜひ目を通していただきたいです。男性が月経周期とコンディションの関係について知ることで、女性のからだに対する理解が深まりますし、アスリートへの効果的な指導にも役立ちます。また、女性は自分のからだに向き合うことで、もしかしたら病気に気づくきっかけになるかもしれません。「生理中におなかが痛いのは当たり前。がまんして練習に参加する。」というようなことがなくなってほしいと思います。

 今後は、アスリートや若年者だけではなく、各ライフステージに応じた女性の健康に資する研究も推進していきたいと考えています。

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