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コラムの発信を開始します(田邊)

はじめまして、体育研究所助教の田邊弘祐です。これから、体育研究所の各研究プロジェクトに関するコラムを毎月発信していきます。専門用語を可能な限り使わないよう、わかりやすく情報発信ができればと思います。どうぞお気軽にお立ち寄りください。

HPにもありますように、体育研究所では、現在5つの研究プロジェクトが動いています。

  • 健康に関する生理・生化学的基礎研究
  • 子どものからだに関する研究
  • 中高年の健康寿命延伸に関する研究
  • 女性の健康とスポーツに関する研究
  • 競技力向上のための効果的なトレーニング方法およびコンディショニングに関する研究

私は、この中の“子どものからだに関する研究”を担当しております。今回は、その中でも“心の発達”についての研究をご紹介したいと思います。

本年度も、静岡県にある長泉町立北中学校[4月19日(金)]にて、“go/no-go”調査を行いました。go/no-go調査では、いわゆる“心”の測定を行うのですが、そもそも“心”の状態を測ると言われた時に、その心はどこにあって、どのような方法で測定するのか、すぐに思い浮かべることはできますでしょうか?

いかがでしたでしょうか? どのような気持ちなのかをアンケートで答えてもらう…とイメージする人がほとんどではなかったでしょうか?

ただ、意思・意欲・判断・集中力等の働きを担っているは、前頭葉(脳)です。ですから、心の問題も“からだ(前頭葉)”の問題として議論することができます。

心をからだ(前頭葉)の問題としてとらえることができるgo/no-go課題をごく簡単に説明すると、以下の3種類の課題を行っています(図1)。

目の前にある箱が…

  • ランプになったらゴム球を握る
  • ランプになったらゴム球を握るランプ握らない
  • ランプはゴム球を握らないランプ握る(※2とルールが逆)
図1.go/no-go調査の様子(2019年04月19日)

そのまま日本語訳をすると、行く/行かない課題となりますが、この課題に沿って日本語訳をすると、ゴム球を握る/握らない課題となります。

このようなルールを子どもたちに説明して、課題を行います。すると、「ランプの点滅の有無やルールに関係なく、なんでも握る子」「握らない時でも握ってしまう子」「握る時に握れない子」というように、様々な特徴や反応が観察できます。それらの結果を基に、前頭葉のタイプを5つに分類(不活発型、興奮型、抑制型、おっとり型、活発型)します。これらのタイプは、最も幼稚なタイプと言える「不活発(そわそわ)」から出発し、子どもらしい「興奮型」の時期を経て、次第に大人らしい「活発型」へと移行していくと考えられています。

このような“心(前頭葉)の発達”に対する貴重なデータが現在までに約4000名以上集まっています。そして、その多くが保育・教育現場の先生方からの依頼を受けて実施されています。このことからも、子どもの“心の発達”が心配されていることを窺い知ることができます。

男子では、小学校入学時(6歳)で最も幼稚なタイプと言える「不活発(そわそわ)型」が1969年に比して、3割も増加しており(図2)、学級運営が困難であるという現場の声も頷けます。
女子では、男子ほどではないものの、1969年調査と1998年調査では各年齢における「不活発(そわそわ)型」の出現率が増加している(図2)様子を確認することができます。

図2.大脳前頭葉「不活発(そわそわ)型」の出現率の加齢的推移

研究の一連の流れが「①保育・教育現場で心配されている実感調査、②それらの事実(実態)調査、③問題解決に向けた実践研究」とあるならば、現状では、“②”のところまでが明らかにされつつある段階にあり、これらの事実が惹起された理由はもちろんのこと、どのような解決方策があるのかについての議論を進めています。

本研究の成果は、論文として公表され次第、HPでお知らせをしますので、どうぞご期待ください。

体育研究所助教 田邊弘祐

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