理事長・学長挨拶

理事長挨拶

日本体育大学理事長 松浪 健四郎日本体育大学理事長 松浪 健四郎 MatsunamiKenshiro
若者の「夢」を育み、進化させる、
そのための環境がここにはある。
若者の特権は、「夢」を持てる点にある。「夢」は、大きければ大きいほど、やりがいがある。大学は、一人一人の運命を変えるところに存在価値がある。「夢」を現実のものにしてくれる装置と運命を変えてくれる指導者が、日体大には準備されている。
毎年、卒業生や現役学生たちが、JICA(国際協力機構)から発展途上国へ体育・スポーツ等の指導者として派遣されている。その数は日本一、日体大の国際化を識る人は多くはないだろうが、「夢」の第一歩は国際人になることから始めてもよいだろう。
吉田松陰が言う。「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、故に、夢なき者に成功なし」。夢に向かって前進すれば、己の人生を豊かにしてくれる。そのために、好きな身体活動を生かすべきである。
日体大は、戦前まで軍部に協力する学校であった反省から、戦後は平和のために貢献する大学へと転じた。小さいことにクヨクヨせず、世界平和への使者としての脱皮を求めます。世界平和の構築、それよりデッカイ「夢」はありません。世界を舞台に活躍してくれる学生を求めています。オリンピックは、平和の祭典でもあるのですから。
大学には、学生たちを刺激する工夫と情報、人生を左右する確かな羅針盤とプログラムが必要です。創立130年を迎えようとする日体大は、歴史と伝統に支えられながら、各方面で才能を開花させる卒業生を多数輩出してきた。かれらが真摯に社会で活動してくれた結果、大学の評価も高まり信頼を獲得できたのです。日体大の特徴は、それほど大きな大学でないのに、全国に卒業生が散らばっていること。学校のある所には、日体大OBが意気揚々と教壇に立っている。そこに日体大の凄さがあろうか。
米国の有力な半導体メーカーの副社長、大手の食品チェーンの社長、全国の地方自治体の議員や市町長等、卒業生は多彩な場で存在感を発揮してくれている。個性を尊重した教育は、魅力的な人材を育成する。どんな場においても、常に犠牲的精神を宿わせ、貢献する特異な人材を日体大は世に出したいと願っている。まず体力があれば、気力もある。それらをどの方向に向かわせるか、教授陣の腕の見せどころであろう。
日体大はアスリートだけを養成する大学ではない。己の身体的、技術的な可能性に挑戦しながら、強い精神力と好奇心を養う場でもある。つまり、社会人として役立つ教養を身につけつつ個性を磨き、立派に自立できる有為な人づくりの大学である。保育士から大学教員まで、全教育機関へ指導者を送り出す稀有な大学でもある。資格社会、免許社会の日本にあって、日体大の強さはどんな時代を迎えようとも輝きを失わない。
日体大は、アジア最古、世界最大の体育大学です。「身体にまつわる文化と科学の総合大学」として、今後もより発展すべく、あらゆる企画を立てています。入学して良かった、学んで良かった、と誇れる大学、それが日体大です。

Profile
1965年、日体大入学。全日本学生レスリング選手権、全米選手権等で優勝。東ミシガン大に留学。日大大学院文学研究科博士課程単位取得。アフガニスタン国立カブール大講師、専修大教授を経て、1996年に衆議院議員に初当選。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年より日体大理事長。博士(体育科学)。日本体育学会名誉会員。旭日重光章を受章する。著書に『古代宗教とスポーツ文化』等多数。

学長挨拶

日本体育大学学長 石井 隆憲日本体育大学学長 石井 隆憲 IshiiTakanori
さまざまな人や知識に触れ、
実り豊かな学生生活を。

身体にまつわる文化と科学の総合大学を目指して

日体大はまもなく創立130年になろうとする伝統ある大学です。戦後から続く体育学部をはじめ、2013年に児童スポーツ教育学部、2014年に保健医療学部、2017年にスポーツ文化学部、2018年にスポーツマネジメント学部を設置し、現在は5学部体制で教育・研究を行っています。
これらの学部は、意義のある学びを実践し、その成果を社会へと還元すべく、社会情勢の変化に対応するかたちで設置されてきました。5学部といっても、経済学部、法学部、文学部、工学部というようにまったく異なる学問領域を扱っているわけではありません。本学で教えているのは、いずれも体育・スポーツ、あるいはより広く身体に関連した学問です。しかしながら、より詳しくみると、その中にもたくさんの分野があることに驚かれると思います。
体育学部、児童スポーツ教育学部、保健医療学部では、乳幼児から学童、青年、成人、高齢者まで、人の一生に寄り添い、健やかな生涯を設計する学問を修めます。スポーツ文化学部、スポーツマネジメント学部では、地域のコミュニティから世界的なネットワークまでを舞台に、体育・スポーツを基軸とした社会の活性化について探究していきます。それぞれの学部は互いに関連する部分がありつつも、独自の観点や専門性を持っています。各学部固有の特色に関しては今後もより一層強化していき、“身体にまつわる文化と科学の総合大学”を目指していきます。
20年後、30年後の社会はどのようなものになっているのか、そこで必要とされる大学のあり方はどんなものか、若い世代の教育者や研究者、そして本学で学ぶ学生たちとのコミュニケーションを通じて将来の方向性を一緒に模索していきたいと考えています。

社会のさまざまな場で活かせる体育・スポーツの専門知識

日体大を受験する人の多くは、体育教師やアスリートになるといった目標を持っています。それはもちろん一つの選択肢として素晴らしいことだと思います。ただ、せっかくならば、より広くスポーツの世界を見てもらいたい。スポーツの価値や意義といったものは、この20年くらいの間にずいぶんと拡大してきました。社会の中で体育・スポーツの果たす役割が大きくなってきているのです。
例えば、日本では少子高齢化による医療費の増加が問題になっていますが、運動指導によって人々の健康維持を促進すれば、高齢になっても自分自身で体調管理を考えるようになり、医療費の増加を抑えることができるかもしれません。また、昨今では「両親と子ども」という核家族に変わり、夫婦のみの世帯や一人で暮らす単身世帯が増えています。このような人たちの生き方をサポートするための新しい仕組みが必要ですが、そこでは健康とコミュニケーションをつなぐ仕組みが求められてくるでしょう。これがビジネスにつながることになるかもしれません。
こういった世の中の移り変わりを見渡してみると、体育・スポーツについて学ぶことの意義は、何も体育教師やアスリートになることだけではないと気づくと思います。ですから、体育教師を目指して入学したとしても、視野を広く持ち、柔らかい頭で学び、さまざまなことに興味を持ってほしい。そうすることによって、将来の選択肢が増え、人生の可能性も広がっていきます。
また、学問のあり方も昔に比べるとだいぶ変わってきました。昔は「他の人が知らないことを知っている」といったことが評価されていましたが、今はインターネットで検索すれば、どんな情報でも簡単に知ることができる時代です。現在ではむしろ、さまざまな情報をいかに分析し、利用することで社会や学問の発展に役立てていくかということが重要になっています。ですから、とくに大学院などでは自分自身の頭で考え、それを発信していくことが求められます。
無から有が生まれることはないので、学部時代に一定の知識を身につけておくことは、将来どのような道に進むにしても大切です。身につけた知識は新しいアイデアを生み出すための源泉になりますから、学生時代にしっかりと知識を蓄えてほしいと思います。

さまざまな人との対話を通じ学生生活をより豊かなものに

このコロナ禍によって、人と会うことの大切さというのを改めて強く感じた人も多いでしょう。本学でも密を避けるために授業を少人数制にしたり、リモートに切り替えたりしており、以前のように面と向かって気軽に対話できる機会は少なくなっています。リモートの授業も便利で良いのですが、私自身が学生時代にどんなことに影響を受けてきたのかを振り返ると、必ずしも授業だけではない。授業以外の場での先生や友人とのコミュニケーションの経験が、社会で生きていくために必要な人としての幅を作ってくれたように思います。
もちろん、こうした時期ですのでコミュニケーションの取り方は考える必要があるでしょう。WEB会議ツールなどを使って情報交換をしたり、オンライン授業で授業中に学生だけで雑談する時間を作ったり、考えようによっていろいろなかたちが実現できるので、学生にも参加してもらいながら仕組みづくりをしていきたいと思います。
また、実技や実習演習、実験はリモートではできません。これらに関しては対面の授業が行えるように方法を模索しているところです。本学の教員には医療従事者も多数在籍しているため、専門家の意見を聞いて感染対策に取り組みつつ、できること・できないことを明らかにしようとしています。同様に海外留学制度や学術交流、スポーツ交流などについても徐々に促進していくための基礎づくりをしていきます。
大学の良し悪しというのは、偏差値だけで決まるものではありません。いかに満足のゆく学生生活を送れるかということが重要です。「日体大に来て良かった」と思える、楽しく充実した4年間を過ごしてもらえるよう、大学としてもさまざまな改革を実施していきたいと考えています。
個人的にも、日体大は良い大学、面白い大学であると感じています。とくに各教員・職員は非常に親身になって相談に乗ってくれます。メールのやり取りだけで学生とのコミュニケーションを済ませてしまうような教員はいません。これは日体大が伝統としてきた体育・スポーツが、一人ひとりと向き合って指導するものだからでしょう。入学された際には感染対策を万全にして、是非、積極的にいろいろな人とコミュニケーションを取ってください。それによって皆さんの大学生活もより豊かなものになっていくはずです。

Profile
北海道出身。日本体育大学大学院体育学研究科修士課程修了、1998年に博士(社会学)を取得。東洋大学の文学部・社会学部・ライフデザイン学部で教鞭を取ったのち、2014年より日本体育大学へ。保健医療学部教授、スポーツマネジメント学部学部長を経て、2021年4月第13代学長に就任。専門はスポーツ人類学。ミャンマーの伝統スポーツ、チンロンの普及・指導を行う日本チンロン連盟の代表も務める。