日本体育大学スポーツ科学研究   NSSU Journal of Sport Sciences


発刊の言葉

「日本体育大学スポーツ科学研究」の発刊によせて

日本体育大学総合スポーツ科学研究推進センター長
日本体育大学大学院研究科長
高橋 健夫

 待望の「日本体育大学スポーツ科学研究」が発刊されました。本誌にたくさんの優れた学術論文が掲載され、全国から注目されるような格調のあるジャーナルに育っていくことを願っています。また、このジャーナルが発刊されたことによって、日本体育大学・大学院の学術研究のレベルが飛躍的に発展することを期待いたします。

【発刊の理由と役割】

 本年4月に「日本体育大学総合スポーツ科学研究推進センター」が発足いたしました。このセンターの役割は、本学のスポーツ科学研究の発展に向けて中枢的機能を発揮することにありますが、そのための不可欠なツールとして「日本体育大学スポーツ科学研究」が発刊された次第です。将来的には、本センターと「体育研究所」との一元化を図り、「総合スポーツ科学研究センター」に発展させることを計画しています。これが実現すれば、センター独自の研究プロジェクトを立ち上げ、先端的な研究を推進するとともに、その研究成果をジャーナルを通して発表していくことになります。

 また、現在本学では、「研究活動推進委員会」において、本学の教員が応募したプロジェクト研究及び個人研究の意義と可能性を審査し、「学術研究補助費」を提供していますが、本年度から、この補助金を得た研究の成果は必ず論文にまとめ、学内外の学術雑誌に投稿することを義務付けております。その1つとして、このジャーナルを活用していただきたいと思います。このように、本ジャーナルを介して、本学の学術研究の基盤を強化し、ひいては外部資金導入の倍増、倍々増を実現していきたいと考えています。

 くわえて、本ジャーナルの役割は、本学大学院の拡充・発展に寄与することです。本学では、伝統のある「日本体育大学紀要」が刊行されてきましたが、本誌は、これとは別の第二のジャーナルとなります。本学大学院博士課程は創設されてすでに14年の歴史をもち、すでに70人近くの課程博士・論文博士を輩出してきましたが、新しいジャーナルを発刊することによって、大学院の質的・量的な発展をめざしています。従来から、院生の博士論文作成に関わって、「数編の学術論文を学術誌に掲載していること」を条件にしてきましたが、そのうち1編は大学が発刊するジャーナルの論文もカウントできることになっています。そのような意味で、大学が発刊するジャーナルの質が問われることになります。

 そこで新しいジャーナルでは、大学院生が投稿する論文については原則として本学の博士課程に所属する教員が審査員となって、博士論文の内容としてふさわしい論文であるかどうかを審査することにしています。数年前から日本体育大学大学院が編纂してジャーナルを発刊する案もありましたが、「総合スポーツ科学研究推進センター」が設置されたことから、このセンターが中心となり、大学院研究科が共同して「日本体育大学スポーツ科学研究」を発刊することになった次第です。

【ジャーナルの名称】

 「スポーツ科学研究」というジャーナルの名称ついてふれておく必要がありそうです。というのも、国際的に慣用語となった「スポーツ科学(sport science)」という用語については、まだ一元的に理解されていないように思われるからです。まず、日本ではすっかり定着している「体育学」という用語は、国際的には存在しないということを知っておく必要があります。あえて「体育学」というのであれば、それは「体育の教育学(pedagogy of physical education)」を意味し、日本では「体育科教育学」あるいは「スポーツ教育学」という狭い分野の研究になります。

 また、「スポーツ科学」というと、スポーツの生理学、バイオメカニクス、医学などの自然科学的研究に限定して捉える見方が強いようですが、国際的には人文・社会科学的研究も含んだ総合的な学問分野をさします。したがって、スポーツの哲学、心理学、社会学、経営学、教育学なども「スポーツ科学」の範疇に入ります。同様に、「スポーツ科学」というと健康や保健分野の研究を排除する響きがあるようですが、体育学がそうであったように、これらを広くスポーツ医学に所属する領域として受け止めていただきたいと思います。

 くわえて、「スポーツ(sport)」という言葉自体が問題になるようですが、今日では、決して「競技スポーツ(competitive sport)」に限定して理解されるわけではありません。1970年代初頭に、旧西ドイツで「体育」から「スポーツ」への名称変更が国をあげて実行されましたが、この制度的転換の立役者であったH.Bernettが語ったように、スポーツは競争的なスポーツにとどまらず、健康のため、楽しみのため、社交のために行われるすべての身体活動(体操、ダンス、野外活動も含む)をスポーツと呼んだわけです。端的に、スポーツは、身体活動や運動と同義語であるということです。したがって、新たに発刊された「日本体育大学スポーツ科学研究」は、これまでの「体育学研究」とまったく同様の研究対象(研究領域)を受け入れるジャーナルであります。

【ジャーナルの投稿資格と利点】

 このジャーナルの投稿資格は、原則として本学の教員・大学院生(前期課程の学生、後期課程の学生)となっておりますが、本学の卒業生や大学院修了生にも門戸を広げていきたいと思います。また、他大学の教員であっても、本学の教員及び大学院生との共同研究者である場合には誰でも受け入れることになっています。

 本ジャーナルは、電子ジャーナルですので、論文を投稿していただき、審査が終了・受理された時点で即時に掲載されます。しっかりした論文であれば、極めて短時間に掲載されるということです。また、電子ジャーナルではありますが、投稿者には紙媒体の「別刷り」を提供することにしておりますので、いろいろな用途で活用できるようにしています。最後に、多くの教員と大学院生がふるって投稿していただきますよう、衷心よりお願いいたします。

2012年10月