学友会クラブ・サークル活動
  1. 研究活動

研究紹介

「運動は楽しいものなんだと伝えるのが、体育授業の根幹です。」スポーツ教育・健康教育学系 近藤 智靖 教授

経験を基にした、いわば職人技だった体育授業を、
理論の裏付で普遍化させた学問。

―「体育科教育学」「スポーツ教育学」とは、どのような学問ですか?

体育とは何か、体育授業とは何かを研究して、よりよい体育教師の育成を目指しています。

この学問ができてから30年以上が経ちますが、それ以前の体育の授業は、ベテランの教師が積み重ねてきた経験を基に行うものでした。いわば、職人技的な授業だったのです。けれども、学問としての研究が進んだことで、それまでにはなかった理論的裏付けができました。それによって、職人技だった体育授業の指導法がデータ化されて一般化し、共有できるようになりました。「体育科教育学」「スポーツ教育学」は、質の高い体育授業を保証するための基盤となる学問といえます。

基礎理論を学んで学校の現場で教育実習を行い、
修士論文のテーマは学校現場の問題に関連したものを
選ばせています。

―先生が担当されている授業では、何を教えているのでしょうか?

「スポーツ教育論」では、体育の授業を作る時の基礎理論を教えます。割合で言えば、講義が3分の1、理論・テーマに沿ったディスカッションが3分の1、残りの3分の1が日体大大学院の必修である修士論文作成に向けての各自の取り組みです。ディスカッションでは、その時々に社会で問題になっている事柄をテーマに皆で話し合います。「プラクティカムⅠ」は、基礎理論を用いながら学校で教育実習をします。

修士論文のテーマは、学生が「これをやりたい」と言ってきたことに、「おもしろいね、やってみなさい」とその思いを尊重しています。ただし学生から適切なテーマが出てこない際には、どんなことに興味を持っているのか聞き出したり、その学生の大学院生活を観察して、私からアドバイスや提案をすることもあります。金曜日の勉強会、夏合宿あるいは食事をしながらなど、授業の枠を超えた機会で学生と話します。

―学生の研究テーマにはどのようなものがありますか?

一例を挙げると、修士2年の滝沢洋平君の「ベースボール型授業」です。グラウンドにベースを配置して行う運動がベースボール型授業で、ソフトボールやキックベースを"ただ単に"やらせることがほとんどでした。でも、ボールを投げたりキャッチしたり、バットで打ったり、ボールをキックするのは、簡単ではありません。そういった運動のできない子でも楽しめる授業にするには、どうしたらよいかを考察しています。

そこで彼は、ボールを投げる動作を会得させるために、ロケットボールを使います。正しい形で投げて空中を飛ばせると、「ヒュー」という音が鳴ります。子どもたちは大喜びでロケットボール投げをします。こうして運動が苦手な子でも、ベースボール型授業に楽しく参加できるように導いていきます。滝沢君は、ロケットボールのように遊び感覚で始められて、運動能力を向上させられる教具の開発にも取り組んでいます。

運動が得意な子どもばかりではありません。
運動が不得手な子が前向きに参加できる体育授業を目指します。

―先生が理想とする体育授業とはどのようなものですか?

子どもたちは、運動が好きで上手に体を動かせる子ばかりではありません。体育が嫌いな子、苦手な子や太っていて体を動かすのが不得手な子もいます。そんな子たちが「楽しいなあ、またやってみたいなあ」と、プラス志向になるようにしていく授業がよい体育授業だと考えています。私が最も重視しているのは、運動の苦手な子たちが、どうやったら楽しく参加できるようになるかに配慮した授業を作ることで、この目標は学生とも共有しています。

―理想の体育授業を実現させるために、学生にはどんなことを教えていますか?

大きく分けて3つポイントがあります。1つ目は「課題設定の仕方」、2つ目は「よりよい仲間関係を形作る方法」、3つ目は「肯定的に関わる姿勢の大切さを知ること」です。

「課題設定の仕方」の一例を挙げると、まず、跳び箱の開脚跳びができない子どもの映像を見て、子どもが楽しみながら跳べるように指導するにはどうすればよいかをディスカッションします。学生からは「跳び箱の一番上の段の上に手をつくラインを引けばいい」「まずは低い段から跳ばす」「跳び箱を横にすればいい」など、さまざまな意見が出て議論が白熱します。意見が出切ったところで、優れた先生の映像や資料を見せて、優しい課題から始めて一歩ずつ課題の段階を上げていき、開脚跳びができるように導くための、実際の対応法を示します。

また、3つ目の「肯定的に関わる姿勢」とは、子どもが嫌な思いや後ろ向きになるような否定的な接し方はせず、学校生活が楽しくなるような声掛けなどをするということです。

運動の苦手な子は外部から一方的なベクトルを受けがちです。
仲間関係を構築して自分からもベクトルが出せるように
導きます。

―運動が苦手な子どもが体育の授業を楽しめるようになるにはどうしたらいいですか?

学校では子どもたちの仲間関係がとても大切な要素になります。小学校では運動のできる子がクラスを仕切ったり、人気があったりします。運動のできない子は「お前、足遅いなあ」「ヘタクソだなあ」などと言われやすく、優しく接してくれる友達でもアドバイスは上から目線になる場合も多いです。運動のできない子は、自分に向かってくるいろいろなベクトルを一身に受けざるを得ないまったくの受け身の状態に陥ってしまいます。そうするとその子は、言い返すことができなくなり、何をするにも自信がなくなって、クラスで目立たない存在になります。そういった子をクラスで孤立させないためには、色々なことを言い合える、いい仲間が必要になります。

私は学生に、子どもたちには仲間との横のつながりが重要だということを教えています。そのために、運動の上手な子と苦手な子をペアにして、お互いによいところを褒め合いましょうなどと話して、横のつながりを持てるように導く方法なども教えます。

一方で、自分の体で表現することは苦手でも、この部分をこう動かせばうまくいくはずだと、運動の仕方を頭では分かっている子、コーチングのできる子がいます。そういう子にきちんとした知識を授けてあげれば、運動のできる子に逆にアドバイスできるようになるんだということも学生には教えています。運動のできない子が、運動のできる子にアドバイスできるようになれば、それまで受け身一辺倒だったベクトルが、自分からも発信できる双方向性が生まれて健全な形にできます。

大学院の教育実習では教員が実習内容に関わり、
電子日誌を通じて学生と教員がコンタクトを取ります。

―大学院の教育実習は、学部の教育実習とは違うとうかがいましたが。

学部での教育実習の内容は受け入れてくれる学校にお任せですが、大学院の教育実習は、教員が実習内容に関わっていきます。学生にアドバイスを求められた時は、やりたい授業の形を実現に導けるよう問題点を指摘することもあります。また、学生と我々教員の間に、電子ポートフォリオを開いています。実習中に遭遇するさまざまな出来事や戸惑いなどを、学生は日誌のように書き込み、教員はそれらに対してコメントをします。「自分をナメてくる子どもに、どんな対応したらいいか分からない」「今日、フラッグフットボールをしたら、こんな反応がきた」などで、学生の奮闘ぶり、成長ぶりがダイレクトにつかめます。

様々な学問的バックボーンを持つ学生たちの、
新たな"化学反応"に期待しています。

―先生の研究室には、どのような学生が集まっていますか?

実は私は、他大学出身者の割合をもっと増やしたいと思っています。というのは、研究室の活性化のためには、異分子が必要だからです。良くも悪くも日体大出身者は、日体大の考え方に染まっています。そこに、日体大とは異なる教育を受けて、異なる学問的バックボーンを持つ者が加わると、議論にバリエーションが出ます。議論も広がり、深くなっていくでしょう。様々な出身者が合わさることによる研究室内での新たな“化学反応”に期待しています。

―先生の研究室で学ぶに当たって、学生に求めることはありますか?

まずは、子どもたちに愛情を持って接することができること。次に、運動を決して罰にしないこと。この2つの姿勢を維持して欲しいです。負けたからといって、腕立てや腹筋を科したりしてはいけません。運動は楽しいものなんだと伝えるのが、体育授業の根幹です。罰として運動をさせては、子どもが運動を嫌いになってしまいます。また経験が万能だと思い込まないことも大切です。子どもも社会も常に変化しているので、経験ばかりに頼っていたら変化に対応できなくなります。そのためには、学び続ける覚悟が必要です。運動ができるだけでは駄目なのです。このような姿勢や意欲のある学生は、大歓迎です。

ページのトップへ
  • 願書・資料請求
  • お問い合わせ一覧